ミルキーウェイ

いまの時代にあえてネットで発信する理由はどうしても伝えずにいられないことを伝えるためだと思います

黒澤明監督「わが青春に悔なし」 統治時代のGHQ民主主義映画

巷では「この世界の片隅」にという映画が人気です。それに合わせたわけじゃありませんが、黒澤明監督の「わが青春に悔いなし」を見ました。こちらも戦前から戦後を題材にした戦争映画です。

黒澤映画の中であまり派手なほうではないので今まで見たいと思わなかったのですが、他の主要な作品を見てしまったのもあり、たまたま見つけて借りてきました。

おそらくネットで検索するとこの映画に関する膨大な資料が出てくるんでしょう。正確な解釈もそちらを見ればいいと思います。このブログでは私が初見で感じたことを、あえて他の資料を見ないで書いてみます。

序盤の構造はベタで分かりやすいです。主な登場人物は京大事件の首謀者八木原教授とその娘。教え子7人グループは学生運動をしています。中でもリーダー格の二人は糸川と野毛で幸枝の仲間です。

八木原教授は高い理想を持ちながら教え子には危ない橋を渡って欲しくないと思っています。糸川は両親に説得され学生という身分をかけてまで左翼運動に身を投じることができなくなり「裏切者」となります。

もう一方の野毛は理想を殺して学生を続けることなんてできなく、退学して本格的な左翼になります。八木原教授の娘である幸枝は安定した糸川よりも大きな信念を持つ野毛に強く惹かれていきます。

—————–

序盤はいかにもなストーリー展開ですが、後半になるにつれて先が読めなくなります。途中笑ったりしながら楽しく一気に見れました。映画として面白いか面白くないかといえば間違いなく面白い映画です。

ただ戦前戦後の長期間の話なのでダイジェスト的な部分があり、メインの事件について具体的な事実説明が一切なく、少し物足りない部分もあります。具体的な事に触れていたら1本の映画に収まらないので、仕方ないのかもしれません。

もしかしたら元ネタになったスパイゾルゲ事件の知識があればもう少し分かるのかも。

教授の娘幸枝は演技的には昔のお嬢様という感じであり、安定よりも波乱にとんだ人生を望む一昔前の日本人というイメージがあります。当時の理想と現在の理想のギャップを考えるのも面白いです。

全体的にセリフよりも表情や仕草で意味を伝えるシーンが多いです。今風の感覚でいうと少しやりすぎな気がします。そこが「言葉にしなくてもわかるだろ」という何とも言えない迫力につながっていていて、後半の一見地味なシーンだけど張りつめた空気はほかの作品ではなかなか味わえないと思います。

映画の最後に著作権情報を見てびっくりしました。映画の公開は1946年らしいです。日本が戦争に負けてすぐ一気に作られたことになりますね。GHQの力も関わってるんでしょうか。

我々は戦前戦中の資料を見ることはよくあります。戦中の映像も本も豊富なので、彼らがどんな生活をしていたか大体イメージできます。でも敗戦後の統治時代の情報を見ることはほとんどありません。なぜか歴史の教科書からもすっぽり抜けています。この映画は戦後数年間の日本人が見ていた映画のひとつだと思うと何とも言えない気持ちになります。

そんな映画がレンタルビデオ屋の棚の中に普通にあったりするんですね。